本日は以前に行った思い出のレストランをご紹介します。
フランスのブルゴーニュ地方ボーヌの中心街からちょっと離れたSaulieu(ソーリュー)という田舎町にLa Côte d’Or(コート・ドール)という三ツ星レストランがありました。
当時三ツ星の中でも最高峰のレストランと言われ、予約が取りづらくシェフのBernard Loiseau(ベルナール・ロワゾー)の水の魔法料理を食べるだけの為にブルゴーニュから離れた田舎町のこのレストランに世界中から連日美食家の人達が集まっていました。当時毎年ブルゴーニュに行っていた僕は、運よくタイミングが合い、絶頂期のコート・ドールに行く事が出来ました!
入口で受付を済ませてから2階の暖炉のある豪華な部屋に通され、食事は勿論ベルナール・ロワゾーの名前を一躍世界に知らしめた、スペシャリテのカエルのパセリ・ソースの皿の入った料理コースをオーダーし、シャンパーニュのBelle Epoque(ベル・エポック)を飲みながら、ワイン・リストをじっくり見てワインを選びました。その時に出された温かいアペリティフ(前菜)のホクホクした白身魚のフライの美味しさにとても感激し、これからどんな料理が出てくるのだろうとどんどん期待が膨らんできました。
準備が出来たら1階の食事部屋に案内され、入口では何とロワゾー本人が立って待ち構えていて握手をして歓迎してくれました!当日のゲストの皆さんを入り口で待ち構え、全員に握手をする様です。とても皮のぶ厚い大きな手に触れて、「この手で世界一の料理を作るのか」とその時思いました。
その後席に案内されたのですが、ガラス越しに見えた完璧に綺麗に手入れされているフランス庭園が美しく鮮やかだった事にとても驚かせられました。
着席してディナーがはじまったのですが、当時若輩者ながら「自分が今まで生きていて人生最高のステージに居る」と思いながら緊張と興奮の中、素晴らしい時間を過ごす事が出来ました!スペシャリテのカエルのパセリ・ソースには当時ブルゴーニュの神様と言われていた造り手Henri Jayer(アンリ・ジャイエ)のVosne-Romanée93’(ヴォーヌ・ロマネ93年)を合わせました。アンリ・ジャイエのワインが欲しいあまりに殺人をしてしまうという小説が書かれるほど魅力的な素晴らしいワインです。今までに体験した事の無い最高のディナーでした!
しかしその翌年、コート・ドールのシェフのベルナール・ロワゾーがある事が理由で(実際の話は色々と聞いていますが)猟銃で自殺してしまいました。もうロワゾーが作った料理は一生食べれないし、この時の経験は死ぬ時に墓場に持っていく生涯の中でも大きな体験だと思っています。
その後アンリ・ジャイエも亡くなってしまい、元々高価なワインが更に急騰し、完全に手の届かないワインになってしまいました………..しかし、この瓶を見る度に当時の事が鮮明に浮かび上がってきます。
現在でも残されたマダムとシェフでお店を切り盛りしています。
※お店の写真は本店では無く、現在ボーヌ市街地の中心部のホテルのLe Cep(ル・セップ)内にあるロワゾーの支店の写真です
ベルナール・ロワゾー
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